昭和戦前から戦後20年代頃までは、戦災、戦争孤児や食糧危機による餓死、栄養状態や環境衛生の悪さと医療の未発達、保健福祉の不備による伝染病等の病気によって多くの子どもの命が失われました。さらに貧困による、親子心中、捨て子、貰い子殺しなどの悲惨な事件も多発しました。その一方で、戦争中を除けば、昭和時代は子どもたちにとって、明るく楽しい時代でもありました。戦前の都会では、チョコレートなどのハイカラなお八つ、面白い絵本や紙芝居、洋服や靴、デパートの屋上遊園地やお子様ランチ、縁日の夜見世など楽しみがたくさんありました。近所の子どもや、きょうだいも多く、家の中でも外でも、さまざまな遊びで日が暮れました。戦後はさらにテレビや漫画、ゲームなどと娯楽も広がり、子どもの世界も大きく変わり、都市と農村との差も少なくなりました。その“明”と“暗”二つの側面にスポットを当てた企画展です。
第1室(企画展示室)では、昭和の子どもについて、その社会背景とともに「楽しき子ども」と「哀しき子ども」の世界を展示しています。また、当時の子どもたちが胸を躍らせた夜見世を再現したほか、昭和戦前戦後に子どもたちが楽しんだおもちゃや絵本の数々を部屋中にちりばめ、手に触れたり、子どもに返って楽しめる展示になっています。
第2室(子供部屋)では、“山口さんちの子ども部屋”として、高名な歴史学者である山口啓二さん、村田静子さん夫妻の家に残されていた戦前から昭和30年代の母子2代にわたるおもちゃを、当時の日記と共に紹介しています。
<主な展示内容>
●楽しき子ども
きょうだいの考察/家族そろって楽しいお出かけ、デパートの屋上と食堂/心躍る縁日と夜店/街角では紙芝居/洋服を着て元気に/おやつの時間
●悲しき子ども
子どもが死んだ昭和/学童集団疎開という苛烈な体験/『綴方教室』『山びこ学校』『にあんちゃん』にみる働く子ども/人さらいとサーカス/身売りされる少女
<山口さんちの子ども部屋>
企画展の隣の部屋は、第2室として“山口さんちの子ども部屋”という展示になっています。山口家の姉妹2人のメリーちゃんとマリーちゃんという2組のお人形セットをドールハウスに仕立てた棚を中心に可愛い子ども部屋になりました。展示設計およびデザイン・製作は漫画家の高野文子さんが手がけています。創意工夫を凝らした細かい細工も見どころです。